クソしかいねー世

クソしかいねー世に愛を叫ぶ

農家でバイトを始めた男【収穫編】

収穫作業の内容、および収穫作業に伴うアレコレを総括して書いていこうと思う。

バイトしていたのは、もう何年も前のことになってしまったけれど。

 

収穫作業について

まず、収穫作業の手順を紹介する。収穫は以下の流れで行う。
  1. つる刈り(つる切り)
  2. こぐ
  3. 拾い
  4. 寄せる
  5. みしくる
  6. いける
 
順番に見ていこう。
 

1.つる刈り

まず、「つる刈り」である。
さつまいもを掘る上で、つるが邪魔になる。
そこで、先につるを刈るのである。
つる刈り機を使う農家もいるし、鎌を使ってオール手作業の農家もある。
つる刈り機を使う場合にも、刈り残しが発生するので、人力での鎌を使った「つる切り」はやらないといけない。
 
 

2.こぐ

次に、「こぐ」作業である。
漢字で書くと「扱ぐ」。
これは、根っこのついた状態で植物を引っこ抜くことを指す。
さつまいも収穫においては、耕運機、もしくはトラクターで芋を掘り出す作業のこと。
つるがちゃんと切れていないと、トラクターにつるが絡まって作業が一時中断してしまう。
つる刈りをしっかりやらないと、ここで痛い目を見ることになり、トラクターが故障する原因である。
また、扱ぐ作業の前に、畑の隅の芋をある程度は手掘りして、トラクターの通り道を作らないとトラクターが畑に入れない。
ラクターがUターンできるように、畑の端の芋も、ある程度は手掘りしないといけない。
ラクターに乗る人は、疲労度としては最も楽であるが、芋を切らないように掘り出す技術が求められる。
 

3.拾い

次は、「拾う」作業である。
ラクターや耕運機で掘り出された芋を拾う。拾って20kgコンテナに入れる。
ただそれだけ。
ずっと中腰なので、地味に腰にくる。
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ひたすらこういう感じでコンテナに芋を入れていく。
1つのコンテナで、およそ17kgの重さになる。
この作業で腰をやってリタイアする中年が多い。
というのも1日に5t〜8tくらい収穫していたので、画像のコンテナ300個〜450個くらいをいっぱいにするくらいの芋を、ずっと中腰で歩きながら収穫するからだ。
コンテナ半分くらい入れると10kg近くになるけど、満タンになるまでコンテナを引きずって次なる芋を拾う無間地獄。
コンテナは最初に散歩しながら畝に沿って一定間隔で置いていくんだけど、足りないとか余るとかあると畑の端からトラックまで歩かなきゃいけなくなったりなので、容積的にどのくらいの芋があるかを見極めてコンテナを置くのも職人技だったりする。
 

4.寄せる

次に、「寄せる」作業である。
掘り出した芋がコンテナに入って畝に並んでいる。
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この畝に並んだコンテナを、運搬機を用いて回収する作業である。
(画像は、ほとんど終わりがけの時のなので数が少ないですが………)
運搬機とは、例えば以下のようなやつのことである。
 
運搬機でお散歩→
コンテナを持ち上げ→
運搬機に乗せる→
畑の隅まで運ぶ→
トラックに乗せる、もしくは降ろす→
運搬機でお散歩→以下、ループ
 
このループを8時間続けると、2万歩程度の歩数、15km程度のウォーキング、合計5t〜8tの芋の上げ下げ、というような、かなりキツイ筋トレになる。
わりと死にかける。普通に熱中症になるレベルなので、1日2リットル以上の水分補給を心がけましょう。
 

5.みしくる

次に、「みしくる」作業である。
「みしくる」は方言。意味は「むしる」とほぼ同じ。
さつまいもの両端についた蔓やら根やらをプチプチ取る。
貯蔵において、芋に蔓とか付いてると、蔓が芋本体から水分を奪い、蔓から水分が蒸発してしまうらしい。
それを防ぐ為に、1本1本みしくる必要があるというワケ。
何故ここで方言を使ったのかっていうと、雰囲気がさ、みしくる、ってことで覚えたからさ、そういう言葉遣いを大切にしたいっていうことですね。
作業としてはトラクターの次に楽。
ここで、全ての芋をみしくるわけではない。
干し芋づくりってのは、とにかくコストがかかる。
また、加工時にかなりの部位を捨てることになる。
そのため、小さい芋は捨てるのである。
スーパーで売ってる石焼き芋くらいの大きさだと、ギリギリ残すかどうかって感じ。
その判断基準は農家に依ると思われる。
 

6.いける

最後に、「いける」作業である。
漢字で書くと「埋ける」。
さつまいもの貯蔵方法は色々とあるんだけど、私のバイト先の地域一帯では埋ける方法を取っている農家が多い。
読んで字の如く、土の中に埋めるのである。
まず、ユンボなどの機械か、鍬を持ったベテラン爺さんを用意します。
だいたい深さ1.5m〜2mくらいの穴を掘ります。
みしくった芋を入れていきます。
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1tくらい入れて、ある程度の山になったら、形を整えて藁をかけます。
通気性の為に塩ビ管を刺しておきます。
藁で芋を覆ったら、シャベルで土をかけていきます。
いい感じの厚さになるまで、ひたすら土をかけます。
目安は、スコップを刺したときにスコップが半分以上刺さる程度です。
いい感じの厚さになったら、遠州の空っ風で土が吹き飛ばされて芋が露出するなんてことのないように、つる刈りしたときに取っておいた蔓で山を覆います。
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(奥は土をかける前の藁をかぶせた状態、手前は完成した状態)
 
埋けたら、1ヶ月くらい放置して熟成させます。糖化して美味しくなります。
気温が下がった場合には、塩ビ管を抜くなどの配慮が必要です。
 
と、簡単に書きましたが、さつまいもの収穫作業において圧倒的に1番キツイ仕事です。
スコップで土をかけるって言うだけだと簡単に聞こえますが、足元の土をすくう、スコップに2キロくらいの土が乗る、それを自分の足元から肩あたりまで、スコップが半分以上刺さるまで延々と放り投げないといけないわけです。マジでつらかった。
1日に7個くらいの山を作りましたけど、1山作るのに20分くらいかかります。
 
埋け方については農家によって様々で、穴を掘ったら側面に藁を詰めたり、山を作ったあとにビニールをかけて風で土が飛ばされないようにしたり、色々あります。
 
 

作業の進め方

今から書くことは私のバイト先の規模(小規模な田舎の農家)での話であることを念頭に読んでいただきたい。

 

上では一通りの作業を書きましたが、作業自体は同時進行だった。

 

次の次の畑:

つる切りをする人(1~3人)

 

次の畑:

ラクターが畑に入れるように手掘りする人(1~2人)、扱ぐ人(1人)

 

今の畑:

拾う人(2~3人)、寄せる人(1~2人)、みしくる人(2~4人)

 

前の畑:

埋ける人(3人)

 

といった感じで、3か所~4か所の畑に散らばって、各々が流れ作業のように自分の仕事をする。拾い終わったら次の畑に手掘りしにいく、寄せ終わったら次の畑に寄せにいく、みしくり終わったら次の畑にみしくりにいく、というように各人が自分の仕事をやり続けるのが効率的。これが理想的なわけですが、1番大事なのは拾って寄せてみしくることなので、作業の進み具合によっては今の畑で全員が作業することもあるわけです。
 

感じたこと

ということで、なるべく無駄がないように作業指示を出す、っていうのが大事なところだなーと感じました。畑によって、あるいは畑の場所によって、芋の育ち方や畑の性質が異なるので、どの作業にどれくらいの人数を割くか、どれくらいで作業が終わるかの見込みが難しい。難しいからと言って見込みを誤ると、「みしくる芋がないぞ早く拾ってこい!」とか「拾う芋がないぞ早く扱いでくれ!」とかって事態になって、遊ぶしかない人が出てきてしまう。
そういう点において、農家ほどやり方にこだわりがない職業ってないんじゃないかと思った。
同じやり方が通じないのは当たり前で、状況に応じてやり方を変える。
時間がかかりそうなら人員配置を柔軟に変える。でなければ、日が落ちて真っ暗になって街灯もない畑では何も見えない。
 
ここでは経験こそがモノを言う。
70代のジジイが神がかった指示を出す。
経験に勝るものはない、マジでない。
情熱では美味い作物は育たない。
経験がなければ絶対に作れない。
 
だからこそ、IT革命をすべきだと思う。
気温、湿度、肥料、植えた数、日程管理、工数管理、作業量の統計および解析、天気予報、ありとあらゆるデータを取って、70代のジジイがいなくても美味い食べ物が出来るようにしなければならない。
どんどんジジイは死んでいく。
経験を積んだ次なるジジイが参戦していくが、世代交代が後期高齢者でしか起きていない現状で、日本の農業は終わってるんじゃないか。
日本の農業を終わらせないために、死にゆくジジイの経験を、今、デジタル化しなければ手遅れになる。
そういう危機感を抱いている若手もいるのに、農業自体が新規参入しづらいとか、もうね、なんだかなぁという感じ。
 

まとめ

農家の仕事はとにかくキツイ。

農家でバイトを始めた男【服装編】 - クソしかいねー世

で触れたように、収穫時にはゴム手袋をするのだが、蒸発しない汗と肉体労働の結果、豆も出来るし皮も剥けまくる。

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また、ここで述べたように、何tもの芋を毎日毎日拾ったり上げたり下げたりするので、ムキムキになる。

身長179cm、体重55kgの私でも、バイト前はこんなだったのが

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こうなる

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くらいにはキツイ。

(あんまり違いが分からないかもしれないけれど)

中年男性がやるには、ましてや女性がやるには無理がある。

だから、単純な筋肉に依らない方法を、ITを取り入れていくべきだし、

鍛えたい若者は、お金を貰って筋トレができるので、是非、農家の門を叩いてみてほしい。